拙者の写真修行小屋

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2018年 09月 03日

新緑は、かく目覚めし~居谷里湿原~

すぐ近くの中綱湖の水面にオオヤマサクラが響き、三脚の林がひしめいた、その翌週
カメラマンの気配が一気に消失した大町市へ
居谷里湿原
を訪れた
ミズバショウと共にこの湿原の彩りの先陣を切るリュウキンカに会いに行くのが
ここ数年の定番スケジュールになっている
(正確には、ミズバショウよりも先に「ザゼンソウ」が開花するが、
茶色系色の地味なこの花は、「彩り」というよりは、ひっそりと春を告げる古老の語り部のような存在である)
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午前2時半に起床して、塩の道・千国街道に車を走らせる
星空の透明感に胸が弾む
そんな快晴の日には、きっと湿原に朝霧が漂うであろうことを、予感するからだ

姿の見えない、しかしおびただしい数の小鳥たちがさえずる湿原に降り立つ
その混声合唱は、静寂をより深いものへと変化させてゆく伴奏のように感じる
深呼吸をする
毛細血管内を、静寂が駆け巡る
一瞬、冷感が肺から全身へと広がり、そして、急速に馴染んでゆく

ドライアイスの昇華のように地上すれすれの高さを朝霧がたゆたう遊歩道
僅かな気流の乱れがこの霧を消し去ってしまう様な気がして、歩調が、妙に慎重になり、じれったくなる

リュウキンカは、その名の語感のとおり煌めく姿を、心もち霧に淡く滲ませながら咲き誇っていた








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中綱湖のオオヤマサクラ達は、その短い花期をあっという間に終えていたが
この居谷里湿原は、いくらか標高が標高が高く、また日照時間が少ないためであろうか
山桜が今なお盛りで、図らずもリュウキンカとの調和を奏でていた








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もう一つ、気になることがあった
この構図は、居谷里に来るとまず最初に撮ることにしている(理由は今後、別の記事でまた述べたい)ものであるが
主題の樹が、霧中にあっても赤色に見えた
枯れてしまったのだろうか?と思ったが、帰宅後、念のため「信州湿原紀行」を開いてみた
一言一句読みつくしたつもりの本でいたが、まるで初めて見たかのようにフレーズが目に留まった
「居谷里はハナノキの北限分布地で・・・」







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『ハナノキ』
なんとなく童話的で儚げな名前だな、と感じて、さらに調べると
「カエデ科の落葉樹で、絶滅危惧種」
「春に赤い花を咲かせる」
そして
「居谷里湿原に隔離分布しており、5本が生息」
とあった。枯葉だと思っていたのは、実は花であったということだ
稀少性に対してミーハーを丸出しにするようであるが
そういうことであれば、来シーズンは本腰で撮影してみたくなった







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これは、2週間後のハナノキである
花と緑葉の萌芽が同居しており、かの「七色大カエデ」を彷彿とさせるような美しさがある








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話をリュウキンカに戻す
居谷里・親海湿原における撮影では「日の出」に拘っている
太陽そのものを構図に入れることは無いが
両湿原共に山林の上から現れる朝陽をハレーションで表現する
ハレ切りではなく、あえて「ハレ出し」を行う
光源を構図の外に追い出し、かつ、理想的なハレーションが発生する焦点域と絞りを模索する







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居谷里の場合、丁度日の出位置の真下に一本の木が立っているのだが
これをハレーションの中に浮かび上がらせるのが目的である

ほぼ思い描いたどおりのハレーション
しかし、なにかが物足りない、そう思った、その時






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湿原の植物たちがまとっていた朝露が
強い朝日に照らされ一斉に蒸発し始めた
ターゲットの樹が、流れる水蒸気の中から出現する様は
イメージをはるかに上回り、いや、想像力の及ばないような光景であった


新緑は、かく目覚めし








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〜 完 〜










by kobatetuapril | 2018-09-03 21:40 | 風景・スナップ | Comments(0)