拙者の写真修行小屋

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カテゴリ:職人( 16 )


2017年 12月 02日

櫛を挽く~木曽郡木祖村藪原宿 ‘‘ お六櫛 ‘‘職人北川聰さん ~





昔々、木曽は妻籠宿の旅籠の娘「お六」は、頭痛に悩まされていました

そこでお六はある日、御嶽大明神に願掛けを行ったところ

「ミネバリの木で櫛をつくり、髪をすくがよい」

というお告げを受けました

そこでお六は、藁にもすがる想いで、お告げのとおり櫛をつくり髪をすいたところ

嘘のように頭痛が治ったのだそうです

その噂は街道の人々の間に広まり

いつしかミネバリの櫛は「お六櫛」と呼ばれるようになった、ということです






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というのが、私たちの祖先である櫛職人のつくり話です

「御嶽大明神のお告げにより」

っていうのが、いかにも木曽的でしょう






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これがミネバリの樹を櫛の概形に木取ったものです

ミネバリは、別名を「オノオレカンバ(斧折れかんば)」といいます

斧も折れるほど固い樹、ということです

比重も重くて、水に浮かべようとしても沈んでしまうほどです







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では、これから櫛を挽きますよ








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あ、写真を撮るのであれば、帽子を脱ぎましょうか


















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櫛の歯が均等に挽かれていることに驚いているようですね

実は、このノコギリにちょっとした仕掛けがあるのです

大きな刃の隣に、もう一つ小さな刃があるでしょう

櫛の歯を挽くときこの小さな刃が、次の歯挽きの目安を付けるわけです








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でも、それだけでは平行な歯を幾筋も引いていくことは出来ません

そこで、左手の人差し指が大切な役割を果たします

お蕎麦を切るとき、包丁に木の板を当てるでしょう

櫛の歯挽きでは、この人差し指が、板の役割を果たしているのです
















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歯挽きの跡に行う工程が「歯擦り」です

歯先や歯間に丸みをつける、ヤスリ掛けみたいなものです








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これが歯擦りに使う道具です

木の棒に、植物の「トクサ」を貼ったもので

丁度よい擦り加減が得られるのです









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この工程を表裏面に行うことで櫛の概形が出来上がります

この後、磨きや油ひきを施して完成となるのです








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いかがでしたか

享保の昔からお六櫛の技法は脈々と受け継がれ

昭和48年には信州の無形文化財に、その後・昭和57年には長野県の伝統工芸品にも登録されました

私がつくったお六櫛が、海を渡り、モナコ公国の公女様に献上されたのは、ちょっとした自慢です

それは置いときまして、お六櫛がこの先の未来でも‘‘実用品‘‘として

女性の美しい髪をすいてゆくことが、私たちの願いです

身近に、使われ続けてこその伝統なのです













































































by kobatetuapril | 2017-12-02 00:33 | 職人 | Comments(0)
2017年 11月 27日

箸を染む Ⅲ ~漆工町木曽平沢より「漆芸巣山定一」~







最終回






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打ち込む姿勢が、眼差しが、真剣で鋭いほど

微笑みの味わいは、深く、豊かに、そして美しくなるのだろう







箸を染む




~ 完 ~







by kobatetuapril | 2017-11-27 22:01 | 職人 | Comments(4)
2017年 11月 24日

箸を染む Ⅱ ~漆工町木曽平沢より「漆芸巣山定一」~











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工房の空気は、時計の分針がわずかな音をたてて時を刻んでゆく様子と、どこか似ていると思った











by kobatetuapril | 2017-11-24 21:39 | 職人 | Comments(4)
2017年 11月 22日

箸を染む Ⅰ ~漆工町木曽平沢より「漆芸巣山定一」~










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漆は、特に国産のものは、採取できる量が極端に少ないという

そのため、余った分は器に入れ、ラップを被せて保管し、次の作業で再度使用するのだが

保管の間に、どうしても小さなごみや、乾燥した漆の塊が紛れ込む

それらを漉(こ)して、綺麗な漆を搾り出すのが、この漆漉し(うるしこし)という作業工程である








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漆漉しが終わると、持っていた箆(へら)を洗う

箆は、天然林で育った「官材」の檜製で、巣山さんが自身の手で削り上げたハンドメイドである

官材に対し、人の手が加わって育った檜を「民材」というが

成長が遅い分年輪が詰まった官材は、民材に比べ粘りがあり、割れにくく、職人の手に馴染むのだという








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漆漉しの説明を頂いたとき

「勿体ないから、漉して使うんです」

という言葉に胸を打たれた

漆は、何十年もかけて育った樹から、人の涙程度の量しか採取されないのだという

勿体ない

ものを造るからこそ、ものを大切にする

漆の樹が、その身を傷だらけにして搾り出した樹液を、最後の一滴まで使う

命の源である飯を胃袋へといざなう最後の食器・一膳の「箸」は、そんな想いによって造られてゆく










by kobatetuapril | 2017-11-22 23:09 | 職人 | Comments(0)
2017年 11月 20日

予告編・箸を染む ~漆工町木曽平沢より「漆芸巣山定一」~





~ 予告 ~






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小林さん









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漆器って、器って、結局何だと思いますか?









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人は飯を食わなきゃ生きていけないでしょう









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私は、胃袋に、体内に飯をはこぶのが器だと思ってます





漆職人・巣山定一














by kobatetuapril | 2017-11-20 22:00 | 職人 | Comments(4)
2017年 11月 17日

一億年の錦 Ⅲ ~うるし工房・石本玉水~








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私は平沢で生まれ育ちましたが、妻は(北安曇郡)池田町の生まれでしてね






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今でこそ漆芸学校の生先をしている立場ですが、結婚するまで漆芸には何も関わってなかったんです






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私は石本玉水の2代目で、「漆芸職人とは」という観念が出来上がっていた

一方、妻の方は元々絵が好きだったのですが、彼女の生み出すファジーな作品は

まるで、漆芸の世界に新しい風を起こしたようでした






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漆っていうのは、一億年の歴史があります

一億年前の遺跡から、漆塗りを施した食器、つまり、漆器が発見されているのです

そして、平安時代にはその技術が一つのピークに達しました

それから沈金をふくめ、あらゆる技巧が開発されました

今ある漆芸技巧の中で、完全にオリジナルという技は、おそらく無いでしょう







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しかし、だからと言って停滞を続けていていいという訳ではありません

これから先の時代も漆が生き残っていくためには、時代の人たちにいいものだと思われるものを造っていかなければならない

伝統は大切なものですし、職人であることの誇りもありますが、伝統に寄りかかっていては生き残っていけない

伝統は、生き残らなければなりません

私は、漆が好きだから、生き残り続けるために、今の人たちに喜んでもらえるものを創っていきたいのです






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~ 一億年の錦 ~


~ 完 ~




















by kobatetuapril | 2017-11-17 22:43 | 職人 | Comments(0)
2017年 11月 16日

一億年の錦 Ⅱ ~うるし工房・石本玉水~








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障子窓をふるわせていた雨音が、いつしか、やんでいた



EOS5DMarkⅢのシャッター音が、静寂を、一層色濃く染めていた











by kobatetuapril | 2017-11-16 21:35 | 職人 | Comments(6)
2017年 11月 15日

一億年の錦 Ⅰ ~うるし工房・石本玉水~






第一回

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石本玉水さんの工房である

奥にいらっしゃる女性は石本さんの奥様・愛子さんであり、ご夫婦で漆芸職人をされている

天井を覆うほどに並んだ蛍光灯

今まで撮影させて頂いた、巣山元久さん・山崎敏男さんの工房、特に巣山さんの蔵と比べると、圧倒的に明るい

(ちなみに、石本さんは巣山さんのことを「もっちゃ」と呼んでいた)

更に、手元を照らす電気スタンドがある

カメラを構える私に対し「スタンド、消しますか?」とお訊ねになられた

露出は不安定になるだろうが、面白い陰影が出そうなので、いつもどおりの照明で仕事をして頂くこととした






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本題に入る前に、まず、「沈金」とは何か、ということである
前回の山崎さんからお話をうかがっていて、ある程度はイメージがついていたが、見たのは当然初めてであった
素人なりに説明をさせてもらうと
一、漆塗りを施した木材に鏨で紋様を彫り
二、彫った溝に薄く漆を塗り(これが接着剤の様な役割を果たす)
三、金や顔料を擦り込み、「沈ませる」
という技法である
当日、石本さんは、金に加えプラチナ(写真右側)と、青系色の顔料(同左側)を使用されていた
石川県の輪島塗りで盛んな装飾技法であるが、ここ木曽平沢ではめずらしいという






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漆芸というと、一般的には「塗る」というイメージが定着していると思われるが

沈金には「彫る」という工程が加わる

これが紋様になるのだから、当然、失敗は許されない

私には、シャッターを切る前に「息を止めて構図を整える」という悪癖がある

だから、ただでさえ息苦しいのに、シンと静まり返った工房の中で

万が一にも手元をくるわせるようなことをしてしまってはならないという緊張感から

血中酸素を欲して拍動する心臓の悲鳴まで聞こえてくる始末だった






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「もっと気楽にどうぞ(笑)」という、奥様の優しいお声がかかったが、中々、そうはいかない






続く













by kobatetuapril | 2017-11-15 22:30 | 職人 | Comments(4)
2017年 11月 14日

次回予告・一億年の錦~うるし工房・石本玉水~







~ 予告 ~







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漆工町・木曽平沢








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平成29年度・長野県卓越技能者「信州の名工」

うるし工房『石本玉水』 石本則男 氏









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その業、「沈金」

見よ、一億年の粋
















by kobatetuapril | 2017-11-14 21:44 | 職人 | Comments(2)
2017年 11月 07日

マルタイ山崎漆器店・山崎敏男さんⅤ~漆工町・木曽平沢~







~ 最終回 ~






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山崎さん、ご覧になって下さっていますか?

お言葉に甘えて、また素敵な笑顔にお会いしに行っていいですか?

本当に、本当に、ありがとうございました

私は、山崎さんの工房が大好きです



























by kobatetuapril | 2017-11-07 22:57 | 職人 | Comments(0)