拙者の写真修行小屋

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2018年 03月 03日

気嵐の朝に~大王わさび農場~









白鳥の流し撮り一代記を投稿中だが、一休み代わりに風景写真の記事を書いてみる

白鳥の撮影地・御宝田遊水池から帰宅する際、ちょっと寄り道をすると

大王わさび農場

がある

「安曇野」という場所は、その懐かし気な語感と、常念岳をはじめとした北アルプスの雄大な眺めから

日本人の故郷、的なイメージで全国区の知名度を得ているが

際立った観光場所は意外にもほとんど無く、辛うじて、このわさび農場だけが、知る人には知れている程度である









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その大王わさび農場の隣を、「蓼川」という小さな川が流れている
水源は北アルプスの雪解け水
生まれをたどれば「最も冷たい水」のはずで、水温は真夏でも15℃前後である
だが、伏流を経ているためなのか、真冬では反対に、他の河川と比較して水温は高めになる
その「比較的あたたかな水」が、放射冷却の空気にさらされて発生するのが
気嵐(けあらし)
という川霧
これは、この冬最強の寒波がおとずれた、つまり、最も濃い気嵐が発生した、今年の1月27日に撮影した写真
確か、最低気温は氷点下12℃であったと記憶している








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上の写真は色温度を1000k下げた写真、一方、こちらは800k上げて現像した
前者が好みだが、こちらも捨てがたいと思う








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気嵐はわさび田にも発生しており、畝のパターンにあわせて、昇りたての朝陽を眩しく滲ませていた
わさびという植物は、常に新鮮な水に接していないと、たちどころに枯れてしまうらしい
淀ませず、かつ流れ過ぎず
絶妙のさじ加減をもたらすのが、この幾何学模様なのだそうだ








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立ち上る気嵐が最強寒波にさらされダイヤモンドダストと化し
次から次へと、湧水の水面に舞い戻っていた








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黒色の幕は日除けで、夏季には、わさびの頭上に一斉に張り巡らされる
水が淀んでも、日差しが強すぎても育たない。なんと繊細な植物であることか








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一度、長靴を履いてわさび田に入らせてもらったことがある
幕の高さは身長181センチの私がかなり腰を曲げねば頭を擦るくらいのところにある
腰をかがめる手間と、幕を張る作業効率。それらの折衷がこの高さなのだろう








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ところで、大王は、今日でこそ日本最大級のわさび農場であるが
100年前までは、単なる荒地であったらしい








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いや、「単なる」は語弊がある。そこには「湧水」、ただそれだけがあった
古人は、不毛の大地から染み出る最高純度の雪解け水に希望を見い出そうとした
一筋の可能性は、幾十年も続いた開墾の歴史を経て、安曇野のグランドキャニオンとでも言うべき一大景観を形成するに至った








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精度と効率が飛躍的に増した現代だからこそ、その発想に、スケールに、ダイナミズムに、深い感慨を抱かずにはおれない
気荒の向こうで、昔と変わらず鍬を振るう農夫達に、情熱の幻を見る思いがする








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春は名のみの風の寒さや
谷の鶯歌は思えど
時にあらずと声も立てず
時にあらずと声も立てず

「早春賦」は、作詞家吉丸一昌が安曇野を想い綴ったものと言われており
北アルプス山麓を流れる穂高川の堤防道路には歌碑が立っている
歌碑の隣にはガラスケースに入ったオルゴールがあって、スイッチを押すと、メロディがゆるやかに流れる
同じ堤防の桜並木が開花する頃に、そのオルゴールを聞いてみる
金属音が、いつしか穂高川の川音とハーモニーを奏ではじめ、桜の芽が、スローモーションではじける

話は戻るが、わさび農場のほとりにも桜が植わっている
湧水の水温が、他の川に比して高いからだろうか
早春賦の歌詞とは裏腹に、その桜は安曇野の中で毎年いっとう早く開花するという印象をもって見ている



いつの間にか、そんな心の準備をする季節になった






気嵐の朝に

~ 完 ~















by kobatetuapril | 2018-03-03 20:57 | 風景・スナップ | Comments(8)
Commented by flat_white at 2018-03-03 21:19
大王わさび農場といえば、春から初夏のイメージかと思いますが
冬の冷え込んだ美しい朝を堪能させていただきました。
観光農場のイメージが強いのですが
安曇野らしい冬の澄んだ空気と水を感じる写真ですね。
良い風景です^^
Commented by camellia-02 at 2018-03-04 09:24
山里の自然の中に身を置いた風景が 素晴らしいですね。
羨ましいなぁ~。
都会育ちには。
Commented by aryy2349 at 2018-03-04 15:59
わさび農場、素敵な風景ですね。
その中でのスナップのカット・・・
ナイスですね。時間がリアルに伝わってきます。

気嵐はブルーの感じが好きですね。。。
いつもながら気合の入ったカットには感動です。
いい加減な私は見習わなくちゃです。
Commented by sarutv at 2018-03-04 18:34
イイネ!ありがとうございます。
出身は長野県。
若い頃、松本地方で仕事をして、写真を見て懐かしく思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
Commented by ruunouta at 2018-03-05 00:07
こんばんは(・∀・)
いつも読み逃げしてますがコメントは初めてです(笑)
わさび農園をあまりにも素敵に撮られていたので
ちょっと感動してしまいました♪
特に8枚目と9枚目は何ともいえない雰囲気ですね(*´ω`*)
こんな朝の風景を撮ってみたいと思いました
いつも素敵なお写真をありがとうございます♪
Commented by mminorun at 2018-03-06 14:09
わたしもこちらのワサビ園、何回か行ったことはありますが、
まったくちがうkobatetsuさんの風景が見られてびっくりしました!
1,2枚目と下から2枚目がとくにすきです。幻想的ですね。
「農夫」と表現されているところもまた雰囲気を助長させてくれている気がします。

ファン申請をありがとうございました。
わたし、恥ずかしながらはじめてファン申請をいただき、
気がついておりませんでした。
ご丁寧なメッセージまでいただいていたのに、たった今!気づいたという・・・
とてもうれしいです。
これからもよろしくお願いします。
(いま、ちょっと更新を休んでおります。また近日中には~(^^)/)
Commented by kobatetuapril at 2018-03-06 22:50
皆さま、コメントをいただきありがとうございます。
>flat_whiteさん
>観光農場のイメージが強い
実際、イメージだけではなく事実なのですが、働いている方達は真冬の気荒にも真夏の日差しにも耐えて鍬を振るっているんですよね。
大王わさび農場は安曇野随一の観光資源ですけど、皆さんの苦労と努力は本物。そして、歴史にも確かなロマンがあります。
季節は、おっしゃるとおりメインは春ですね。梅も桜も、そして慎ましやかなわさびの白い花も。
白鳥大好き人間ですけど、やっぱり春って楽しみです。

> camellia-02さん
いえいえ、私は都会の人が羨ましいですよ。白鳥がいないことを除けば(笑)
憧れるんですよね、都会のスナップに。田舎の松本でいくら頑張ってスナップしてみても、
なんだか滑稽に思えてきてしまって。
カッコつけた写真撮ってみたいんですよね。

>きったしょうさん
私もブルー派でしたので、ご同意頂けて嬉しいです。
結構何でもかんでも、とりあえず色温度下げてみるか、みたいなとことあります。
白鳥の写真でも、青かぶりしないギリギリまで(まぁ、結構青かぶりしてますが)下げてます。
>スナップ
むむむ・・・三脚を使わずに撮ったのがバレてしまいましたか・・・・
Commented by kobatetuapril at 2018-03-06 23:04
>saruyamaさん
はじめまして。
偶然訪れたブログで松本ゆかりの方と出会えて嬉しいです。
これからもちょくちょくおじゃましますのでよろしくお願いします。

>ruuさん
ruuさんのブログはいつも曲付きなので、そちらも毎回楽しみにしています。
写真だけじゃ無くて選曲も素敵ですよね。
>8枚目と9枚目
ありがとうございます。
8枚目は余計なものが写り込まないようにギリギリまで切り取った1枚で、
9枚目の農夫さんの写真は丁度いいタイミングと光線がおとずれるまで、かな~り粘った1枚です。
農夫さんの写真は30枚以上撮りました。が、ポジションとか、なるべく沢山の方が鍬を使っている
タイミングとか、中々思った瞬間が来ませんでした。もうちょっと粘るべきだったかな~と思ってます。

>mminorunさん
冗長な記事をいつも丁寧に見てくださって、本当にありがとうございます。
こだわった「農夫」にまでまさか言及して頂けるとは・・・感激しました。
下から2枚目、結構大変な体勢(真冬の地面で腹這いローアングル。超寒かった)で頑張った写真
ですから、好きと言っていただけて嬉しいです。
mminorunさんの記事は、確かに更新頻度こそ低いのかもしれませんが一つ一つのクオリティが高くて
いつも楽しみにしています。
わたしも、以前は毎日のように更新していましたが、それよりは一つ一つを丁寧に書こうと
思えるようになったのは mminorunさんのおかげです。
好きなものこそ、マイペースで続けていくべきだと思います。これからもよろしくお願いいたします。
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