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2017年 12月 31日

鎌倉の息吹~長野市信更「長勝寺」仁王~





長勝寺

という寺がある

善光寺で仁王を撮影して以来、白鳥に勝るとも劣らないほどに「仏像写欲」が高まってしまい

撮影可能な仏像は無いものか、と、仏像関連書籍を読み漁った結果たどり着いた寺である

松本市と長野市を結ぶ国道19号から、県歌「信濃の国」に歌われる、犀川(信濃川の支流)の橋梁「久米路橋」を渡った先の

信更町三水

という地区に建っている

私は生家が長野市で、住居が松本市なので、国道19号を通って帰省する都度、間近を通りかかっているはずなのだが

今回仏像について調べるまで、「長勝寺」はおろか「信更」なる地名があることさえ知らなかった

そもそも、住人でもない限り、訪れる理由を見つけることが難しいような、山間の集落なのだ

長勝寺は、そんな、昔話のイメージをそのままスケッチしたような信更に、忽然と、だが、音も無く佇んでいる








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長勝寺には「仁王寺」という通称がある

うりの仁王は鎌倉時代後期の作と言われている

かの東大寺南大門、大仏師運慶・快慶の仁王が1203年・鎌倉初期の造であるから

それからさほど時を経ずして生まれたということになる

桜の樹に換算すれば、十二分に「銘木」を育てるだけの年月を生きている








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齢に鑑みて、長勝寺の仁王は長野県宝に指定されているが、住まいである門は、歴史に比してやや粗末の感がある

そして、門の奥に本堂は無い。向こうには、犀川を隔てて里山と、さらにその向こうに北アルプスが連なるのみである


言い伝えによれば、対岸の里山に建つ「廣福寺」が飢饉続きの困窮でこの仁王を売却し、車で移動していたところ

仁王の天罰であったのか、牛が倒れ進退窮まった際に、長勝寺の住職が引き取ったのだそうな

だから、長勝寺の仁王門は、今も廣福寺の仏を守るため、長勝寺の本堂ではなく対岸に通じているのだという

地図で確認すると、なるほど、仁王門はまっすぐ廣福寺に向かっており

ほぼ真横に当たる、そっぽを向くような位置に、長勝寺の本堂が建っている

伝説とか言い伝えというのは、眉唾であることは百も承知の上で信じようとしてみると、面白い空想の発見に至ることがある








撮影 全てRICOH GR ノートリ

RAW撮りLr現像



~ 阿形 ~




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阿形・吽形ともに、背丈は195cmほど

頭部から胴体までは1本の檜の大木により彫られている

その他は仁王像の御多分どおり寄木により造られている

風化が進み、顕わになった継ぎ目に、もの凄まじさをおぼえる







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以前の記事で、善光寺の仁王は信州が誇る近代彫刻の傑作中の傑作と記した

それは今でも間違いないと思う

しかし、方や、県宝とはいえほぼ地元住民にしか存在を知られていないこの仁王の存在感はどうだ

技術やスケールでは善光寺の仁王にはるかに及ばないのに

その気配たるや、シンとした里山に響き渡り、幾山をも越えてゆくような殺気を帯びていた

魅了され、様々な角度から撮影しつつも、いかなるアングルであれ浴びせられる視線に、粟を生じるようであった









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東大寺南大門や善光寺の雄大な仁王門をくぐるとき、そのスケールや美しさにひたすら感動する

一方、この粗末な門を北アルプスに向かって通り抜けようとするときは

ひたすらに、戦慄がはしる

「やられる」という予感が背筋を滑り通る






~ 吽形 ~








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猛々しい殺気を放っていた阿形に対し、吽形の眼差しは深淵を見つめるように静かである

その静けさが、いかにも人間離れしており、かえって、底知れず怖ろしい








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阿形の右腕がやや淡泊であるのに対し、吽形の左腕は血管が浮き出、筋肉が張り詰め躍動する表情が素晴らしい

本当に、同じ仏師の手によるものなのか、という疑問が生じるほど、この左腕の存在感は際立っている

陳腐な言い方をすれば「今にも動き出しそう」である

長勝寺の仁王が誕生した鎌倉時代は、写実芸術の萌芽期でもあるが

この左腕は、同時代に生まれ今は国宝に指定されている南大門や興福寺の名高き仁王と比べても

全く見劣りしないばかりか、その存在感においては群を抜いている

名門寺院の国宝達が技術と写実主義の煌びやかな結晶であるとすれば、長勝寺の仁王は思念の粋であるように感じる

鎌倉後期という、国史中有数の激動の時代の息吹が、体を吹き抜けてゆくようだ



そういえば、善光寺の仁王も手足の血管の描写が精緻で

そのため、仏師の米原雲海は医学知識を持ち合わせていたと推測されているらしいのだが

もしかしたら米原はこの長勝寺の仁王を見ていたのではないだろうか

世の中に血管の浮き出た仁王は、数多とあるので、その可能性は低いだろうが

近代彫刻の粋たる善光寺の仁王が、今は名もなき仏師による、旅人も通らぬ山里に佇む仁王の影響を受けていたとしたら

大変なロマンである

いや、そもそも、この仁王の作者は「名もなき」と言って差し支えない者であったのか

やはり、とてもそうは思えない

何故、名が伝わっていないのか

何故、鎌倉時代といえば、まともな文化があったのかもあやしいこの地に立っているのか








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それでは皆様、良いお年を


※頂いてあるコメントへの返答・お礼は年明けにさせて頂きます

ありがとうございました


























































































第2回プラチナブロガーコンテスト




by kobatetuapril | 2017-12-31 13:35 | 風土 | Comments(4)
Commented by BROS2015 at 2017-12-31 14:52
こんにちは。2017年後半になってこちらのブログにお邪魔させて
いただくようになりました。真剣に取り組まれている様子が
伝わってくるお写真ですね!

今年も残りあとわずかとなりましたが、お体に気を付け良いお年をお迎えください。
Commented by aryy2349 at 2017-12-31 14:54
こんにちは。
相変わらずに丁寧な文章そして気合の入ったカット
いつも感動して見ております。
ありがとうございました。。。

来年もどうぞ宜しくお願い致します。
良きお年をお迎えくださいませ。。。
Commented at 2018-01-03 10:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kobatetuapril at 2018-01-05 23:35
皆様、コメントをいただきありがとうございます。お返事が遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。

mashamashaさん
こちらこそ、昨年はありがとうございました。これからもちょくちょくおじゃましますので、
よろしくお願いいたします。
技量は半人前ですが、写真が好き!という気持ちは一人前のつもりでやってます(笑)
今年も、白鳥がまだまだこれからがピークですが、色々なものにチャレンジしたいと思ってます。
今後ともお付き合い、よろしお願いします。

きったしょうさん
どうも、好きになったモノには力説せずにはおれない性分のようです(笑)
こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
海無し県民の私にとって、海辺、それも湘南というのは憧れる撮影ステージです。
いつも、ほんのり潮風を感じる作品を拝見するのを、本当に楽しみにしています。

CAPAさん
あけましておめでとうございます。
何分不器用な性分なのもですから、ブログに力を入れているとMakerNote板はご無沙汰気味になってしまいます。
でも、アレの出現も小康状態になったようですので、またボチボチおじゃまできたら、と思ってます。
「毎日お互い真剣そのもので写真談義」というMakerNote板の雰囲気は、ブログとはまた違った充実感があって、
私にとっては変わらずかけがえのない場所ですから。
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