拙者の写真修行小屋

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2018年 03月 21日

白鳥流し撮り一代記 partⅧ









相変わらず仕事が激務続きで

いらっしゃって下さっている皆様にお礼のコメントを差し上げることも出来ず

大変申し訳なく思っています



今日、私が住んでいる松本では大雪が降りました

こんな日は、久々に家でひたすらゆっくり・・・と考えていましたが

「白鳥流し撮り一代記を完遂せよ」という、冬の神様の声による雪だったのかな、と思い直し

久しぶりに記事を更新することにしました


今回partⅧでは、、今シーズン大本命の一枚をアップします








1月27日

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この冬最強の寒波襲来により、御宝田遊水池の水面に気荒が漂っていた
それは、オートフォーカスが迷いを生じるほどの濃さで
まるで、白い砂煙のようであった








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幻想的、といえば聞こえが良いのかもしれないが
やはり、ピントが合わないことには作品にはなり得ない







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またと無い自然現象というシャッターチャンスが、みすみす通過していった







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流し撮りという撮影技法に徹する以上、「落胆」は禁物であるが
さすがにこの日の朝はその色を隠し通すことが出来なかった
全ての白鳥が飛び立った湖を目の前に
急速に眠気が襲ってきて、しばし帰宅する気力さえ沸いてこなかった








1月28日

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最強寒波と気荒はまだ留まっていてくれた
昨日の悔しさをばねに、集中力を奮い起こした








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手持ち流し撮りでは、寒さによる「震え」は即ミスショットに繋がる
薄い毛糸手袋のみを纏った手をポケットの中で温め
白鳥達が飛び立つギリギリの機を見て手を出し、フルサイズの冷え切ったマグネシウムボディを構え
手が寒さを覚知する前に親指フォーカスを当て、パンを行う
最強寒波は、そのタイミングを一層シビアにさせていた








その時だ








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氷点下11℃の空気が寝返りを打った
これだけの寒さにもかかわらず、どうした訳か、南風が吹き始めたのである
通常、この季節は北風に従い左から右へのパンで群れを追うが
急遽、右からのパンを行うこととなった








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タイトル『白い刻』

ISO-100
F/10
シャッター・1/5秒

ブラックアウトするファインダーの中で
不慣れな左方向パンが群をとらえる、確かな手ごたえがあった
闇の中で、興奮と鼓動を押し殺し、鍛錬を重ねた腰の回転を、ひたすら愚直に行った

水面のさざめきが南風に乗って流れてゆくのを待ち、モニターを確認した

一糸乱れず吹き過ぎる風達が表示されていた








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手前味噌もほどほどにしろ、と言われそうだが
いかに『白い刻』が奇跡的であったのかを語りたいと思う
これは、『白い刻』の第2シャッターのショットである
先頭の1羽に対するパンの正確度は、むしろ『白い刻』を上回っているが
追随する3羽が無秩序に被写体ブレを起こしている
5分の1秒という時間の間に、速度や羽ばたきの大きさに、これだけの個体差が生じる、ということだ
この個体差は、滑空状態に入った群よりも、テイクオフ時の群において、より顕著である


具体的にどのような確率計算式が成り立つのかは分からないが
まず、大前提としてパンが正確に決まること
出来れば一画面に4羽、出来れば5羽以上が収まること
そして、それら個体が、全て個体差を生じずに羽ばたくこと
白色が綺麗に発色するように、曇天ではなく晴天であること
ただし、日の出後では翼の描写が劣化するので、日の出前で、かつ低ISOで撮影できる時間帯であること
水面にはカモなど他の水鳥や浮かんでいる白鳥等、余計なものが写り込まないこと
等々・・・
天文学的確率とまでは言わないが
ちょっとした小宇宙が出来上がるくらいの「偶然」が重ならないと、満足がいく作品にはならない
以前に、ブラックアウトフリーカメラが流し撮りに与える好影響について述べたが
そんな技術革新など、この確率の前では些事なのである




白鳥の流し撮りは、評価が分かれる技法だと思う
実際、撮っている本人でさえ
普遍的な美しさを求めているのか
それとも単にシャッタースピードという、数字との格闘における勝利を求めているのか
分からなくなることがある
止め絵派に対するリスペクトを、憧憬に近い形で覚えることさえある
ただ、ここまで来たら白鳥流し撮りカメラマンとしての矜持を
たとえしがみつく様にしてでも持っていよう、と誓うことにしたのだ



地元安曇野市の「豊科郷土博物館」で、毎年「白鳥写真展示会」が開催される
古くて小さな博物館でひっそりと行われるささやかな展示会であるが
しかし、ギャラリーには、我こそはという白鳥カメラマンの情熱と矜持が渦巻いている

『白い刻』を、この展示会に出展する
仕事が忙しくて引き伸ばしの発注やら額縁・マットの選定やら誠に慌ただしかったが
全紙に引き伸ばされ濃紺色のマットに縁取られた『白い刻』は
一日中パソコンと向き合って疲労した目に燦然と輝いて見えた

ギャラリーのライティングに4筋の風が浮かび上がるのを
仕事着から部屋着に着替え、額縁の前に正座しながら思い描いた











# by kobatetuapril | 2018-03-21 23:38 | 白鳥 | Comments(5)